―臨床―

過去8年間の院内救急症例の検討と救急体制の現況


田中 裕,三浦真由美,松井 宏,豊里 晃
三浦勝彦,瀬尾憲司,染矢源治

新潟大学歯学部附属病院歯科麻酔科
(主任:染矢源治教授)


抄録:
 新潟大学附属病院内の過去8年間の救急救命症例の検討を行った。8年間で発生した偶発症例は40例で,そのうち歯科治療時の症例は32例であった。診療科別では口腔外科12症例,補綴科11症例の順に多く,診療内容別では外科処置と補綴処置がともに8例で最も多かった。また32症例中19例において局所麻酔が施行されており,そのうち局所麻酔施行直後の発症は10例であった。偶発症の診断は神経性ショックが10例と最も多く,ついで過換気症候群5例であった。偶発症発生の原因としては,局所麻酔や歯科治療時の疼痛と考えられるものが多く,一方患者の不安感や歯科治療に対する恐怖心など精神的要素も強く影響していた。さらに全身的合併症を有する患者が29例を占め,これも偶発症発症の誘因の一つであると考えられた。救急処置は歯科麻酔科医の適切な処置により,全症例が症状の改善をみたが,なかには管理に難渋するものもみられた。今後さらなる救急体制の確立を目指す必要があると考えられた。


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