Hotz床併用二段階口蓋形成手術法を実施した唇顎口蓋裂患児の言語発達に関する研究
一言語成績を中心に一
磯野信策
新潟大学歯学部口腔外科学第二講座
(主任:大橋 靖 教授)
抄録:
Hotz床併用二段階口蓋形成手術法を行った唇顎口蓋裂一次症例70例について鼻咽腔閉鎖機能と構音を経年的に観察し,8歳時の評価により本治療法の言語成績を検討して以下の結果を得た。
1.8歳時における鼻咽腔閉鎖機能は「良好」59例(84.3%),「軽度不全」4例(5.7%),「不全」7例(10.0%)であり,良好な鼻咽腔閉鎖機能が得られていた。経年的に観察すると硬口蓋閉鎖手術後まで長期にわたって機能の改善が顕著にみられ,これが本治療体系の特徴と考えられた。
2.正常構音を獲得していたものは53例(75.7%)で異常構音の発現をみずに正常な構音発達をみたものが6例,一過性に異常構音をみたが自然消失したものが12例,構音治療が終了したものが35例であった。構音治療を必要とする症例が多かったが,適切な構音治療により8歳までには良好な改善が得られた。
3.本治療法における言語成績の評価は,手術が完了した硬口蓋閉鎖手術後に鼻咽腔閉鎖機能が安定する8歳頃に行うことが適当と思われ,その場合では言語治療の成績も評価に含まれることになる。
以上から,Hotz床併用二段階口蓋形成手術法は種々の緻密なケアを必要とする治療体系といえるが,言語に関しても同様に緻密な治療計画と長期のケアが必要である。本治療体系では医学面から適切な治療が行われ,しかも,チームアプローチの一環として言語治療が十分に機能していれば,正常な顎発育とともに正常な言語を獲得させることが可能であると考えられた。