低位顎関節授動術後に生じた睡眠時無呼吸症候群の1例


河野 正己,高田 佳之,鈴木 一郎,新垣  晋,中島 民雄
新潟大学歯学部口腔外科学第一教室


抄録:
 顎関節強直症の治療として行った両側の下顎枝に対する低位顎関節授動術後に生じた閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSA)の1例を報告する。患者は52歳の女性で,下顎腫瘍の手術後に生じた両側性の顎関節強直症を煩っていた。閉塞型睡眠時無呼吸症候群は手術直後より下顎が後下方に移動して舌根の位置が後方に変化したために生じた。無呼吸指数(一時間当たりの十秒以上の呼吸停止数)は26.8であった。最長の無呼吸は82秒で,それに伴って心室性期外収縮が出現した。OSAの症状は患者が新しい口腔と咽頭の環境に適応するように舌を前上方に移動させて咽頭部気道を拡大させたことにより徐々に消失した。この適応は舌を前上方に移動し易くするため咬合高径を増加した義歯を使って促進された。


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