Klippel-Feil症候群に合併した
閉塞型睡眠時無呼吸症候群の治療経験
河野 正己,高田 佳之,米沢 雅裕,野村 務,中島 民雄
新潟大学歯学部口腔外科学第一教窒
抄録:
55繊男性のKlippel‐Feil症候群に生じた睡眠時無呼吸症候群の初めての報告である。終夜睡眠ポリグラフと側方セファログラムによって,癒合して著しく前弯した頸椎によって狭窄した咽頭部の気道が睡眠中に過剰な軟口蓋と口蓋垂によって閉塞されることによって閉塞型の睡眠時無呼吸が生じることが判った。この結果は,中枢型の睡眠時無呼吸症候群の原因となりうるArnold-Chiari奇形,延髄空洞症もしくは脊髄空洞症の延髄への波及,歯突起による脊髄または延髄の圧迫,脳幹部の血流低下などが,CT,MRI,SPECTによって認められなかったことに矛盾しなかった。下咽頭に於ける気道を拡大せずに軟口蓋の過剰量を完全に切除する口蓋垂軟口蓋形成術(UPP)を行ったところ,術後には睡眠中の低換気は残ったが,無呼吸は59回から14回に減少した。臨床的にも日中傾眠は消失し,患者は仕事に復帰した。