血管鋳型法を用いたハムスター正常舌の
RFハイパーサーミアによる経時的変化に関する研究


鶴巻  浩,大橋  靖,鈴木  誠*
新潟大学歯学部口腔外科学第二講座,
* 新潟大学歯学部附属病院臨床検査室


抄録:
 本研究の目的は,正常舌組織をモデルとして,加温による血管障害の経時的変化を明らかにすることである。成熟ゴールデンハムスターの正常舌を加温対象とし,加温装置は周波数13.56MHzのRF誘電型加温システムを使用した。設定温度は42.0℃および43.0℃とし,各々40分間1回加温を行った。その経時的変化について,組織学的観察および血管鋳型法を用いた電顕的観察を行い,以下の結論を得た。
 1.組織学的観察においては,42℃加温群では,血管拡帳,うっ血,間質浮腫等の変化がみられたものの,ほぼ48時間で回復した。43℃加温群では,強度のうっ血,間質浮腫,出血および一部で毛細血管壁の破綻が直後から観察され,4週後に一部線維化を後遺した。
 2.血管鋳型法による観察では,42℃加温群では,加温直後から24時間後まで表層の毛細血管の欠損が小範囲でみられたが,48時間後には欠損はみられなかった。43℃加温群では,直後から48時間後まで血管の欠損した部分が加温領域の広範囲に認められ,1週後にも血管網の形態変化がみられた。
 3.以上より,正常血管は42℃40分の加温では,一過性の血行障害が生じる可能性があるものの,48時間前後で回復し,非可逆的な血管障害は生じないが,43℃40分の加温では,相当の血行障害および一部で非可逆的な血管障害も生じることが示唆された。
 4.血管鋳型法を用いた本実験モデルは,ハイパーサーミアによる血管障害を観察するうえで非常に有用であった。


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