顎関節症患者に対する
ヒアルロン酸ナトリウム注入療法の評価


高木 律男,小林 龍彰,福田 全孝,
野澤 佳世子,小野 和宏,大橋 靖
新潟大学歯学部口腔外科学第二講座


抄録:
 今回私達は,顎関節症症例に対し,ヒアルロン酸ナトリウムの関節腔内注入療法を試みたので,その方法ならびに治療効果について評価した。
 対象はアルツの提供が可能となった平成3年11月以降の患者で,それまでに施行した保存療法にても,顎関節部の疼痛に改善の認められなかった18例(男性2例,女性16例),平均年齢53.3歳(21〜82歳)で,顎関節学会提唱の症型分類ではIIIb型4例,IV型14例であった。
 投与方法は上関節腔に対し週一回, 4〜5週の連続投与を原則とした。
 評価方法は,各診療日および予後判定日のVisual Analogue Scale,疼痛点数,開口量,関節雑音,X線写真による骨形態変化などについてその推移を評価した。
 その結果,開口量,疼痛などの改善が14例(77.8%),不変が4例に認められた。
 以上より,本療法は頑固な痛みの持続する顎関節症症例に対し,疼痛の寛解を目的に行うにあたり,関節腔内穿刺という侵襲的治療である点を差し引いても,その除痛効果は十分に期待でき,穿刺に伴う偶発症も少なく,外来で比較的容易に行いうる有効な治療法であると考えられた。


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