第一大臼歯のう蝕有病および
フィッシャーシーラントの処置状況


葭原 明弘 1),佐々木 健 2),太田 啓子 3),
萩原  弥 3),岸   洋志 4)
1) 新潟大学歯学部予防歯科学講座,2) 渡島保健所,
3) 新潟市歯科医師会,4) 新潟市市民局衛生部保健衛生課


抄録:
 今回,年中児から小学6年生の第一大臼歯を対象に調査を行い,今後のう蝕予防対策の充実を図る上での基礎資料を得た。本報では,第一大臼歯のう蝕有病状況,およびフィシャーシーラントの処置状況について報告する。
 調査対象は,新潟県新潟市の1995年度の年中,年長児3,647人,小学生11,045人の第一大臼歯である。調査は,1995年度定期歯科健診に併せて実施された。第一大臼歯の萌出状況,う蝕有病状況,フィッシャーシーラントの処置状況について,各学年ごとに分析を行った。さらに,小学学童をシーラント処置歯の有無により分類し,それぞれの平均DMF歯数を学年別に比較した。
 その結果,平均DMF歯数は,萌出歯数の増加に伴い,小学1年生で0.25本,小学3年生で0.96本と上昇していった。しかし,小学4年生以降,平均DMF歯数の上昇が鈍り,小学6年生では1.97本であった。要観察歯(CO歯)数,シーラント処置歯数についても同様の傾向が認められた。健全歯全体に占めるシーラント処置歯の割合は,小学生全体では19.3%であった。フィッシャーシーラント所有者別平均DMF歯数については,全学年の平均では,シーラント歯所有学童の平均DMF歯数が0.75本なのに対し,非所有学童の平均DMF歯数は1.33本であり,差は統計学的に有意であった(t検定,p<0.01)。
 学童のう蝕予防を検討する際には,第一大臼歯に重点を置く必要があると考えられる。また,フィッシャーシーラントのう蝕予防効果は今回の調査からも強く示唆された。今後,保育園や学校などの施設と歯科医院とが連携を取り,平均DMF歯数が低年齢で急上昇するというう蝕の特性をとらえながら,小窩裂溝部COに対するフィッシャーシーラント処置をシステム化することで,より有効なう蝕予防対策に結びつくものと考える。


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