当科における自己血輸血症例の検討
- エリスロポイエチン、鉄剤の効果も含めて -


鍛冶昌孝,1) 大橋靖,1) 武藤祐一, 1) 高木律男,1) 服部幸男,1), 福田純一, 1) 染矢源治2)
1)新潟大学歯学部口腔外科第二講座 (主任: 大橋 靖教授)
2)新潟大学歯学部附属病院歯科麻酔科 (主任: 染矢源治教授)


抄録:
 今回、当科における自己血輸血症例について検討し、エリスロポイエチン(EPO)、鉄剤の効果についても若干の知見を得たので報告する。
 対象は、最近8年7か月間に自己血輸血で手術を行った291症例とした。
 自己血輸血症例数の年度別推移では、年々増加傾向にあり1995年以降は50症例を越すようになっていた。それに伴い同種血輸血症例数が減少し、悪性腫瘍手術以外では同種血輸血の必要性がなくなっていた。
 疾患別では顎変形症が274例、悪性腫瘍が8例、良性腫瘍が5例であった。
 EPO、鉄剤の効果について800ml採血症例をEPO、鉄剤投与群、鉄剤単独投与群、非投与群の3群に分類し検討した。EPO、鉄剤投与群、鉄剤単独投与群、非投与群のヘモグロビン値の採血前値はそれぞれ13.0, 13.2, 14.8g/dlであり、この値を初期値とすると採血後、術後(4-14日)の初期値に対する比はEPO、鉄剤投与群では0.90から0.96、鉄剤単独投与群では0.86から0.88とそれぞれ上昇、非投与群では0.90から0.79へと減少した。また、ヘマトクリット値に関しては鉄剤+EPO投与群、鉄剤単独投与群、非投与群の採血前値はそれぞれ38.8%, 38.9%, 45.0%であり、採血後、術後の初期値に対する比はEPO、鉄剤投与群では0.90から0.96と上昇、鉄剤投与群では0.89、非投与群では0.90, 0.79と減少した。以上、EPO、鉄剤投与群で術後早期のヘモグロビン、ヘマトクリット値の回復が認められた。


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