下顎に生じたエナ メル上皮線維腫のl例
横林康男,日
出嶋康博,前田美智之,川北小百合
富山県立中央病院歯科・口腔外科(主任:
横林康男部長)
抄録:
エナメル上皮線維腫は歯原性混合腫瘍で,その報告は比較
的少ない。今回私たちは下顎に生じた本症の1例を経験した
ので報告をする。
症例は51歳の男性で,平成5年4月22日,下顎前歯部歯肉の
腫脹を主訴として当科を受診した。現病歴では,3年前より
|1〜3部唇側歯肉の腫脹に気づき,徐々に増大したため当科
を受診した。現症:全身的所見では問題なく,口腔外所見で
は,左オトガイ部にビマン性の腫脹を認め,骨様硬であっ
た。口腔内所見では1|1〜4部唇側歯肉から歯肉頬移行部に
かけて腫脹を認め,骨様硬であった。|12部舌側歯肉にも同
様の腫脹を認めた。X線所見では3〜1|1〜5部にかけて不透
過像と透過像が混在し,一部は嚢胞様であった。CT所見では
1|1〜4部にかけて骨皮質は菲薄化し不鮮明となっており,
表面は不規則で外側・内側方向に突出し,内部骨梁も不均一
となっていた。Tc骨シンチ所見では,下顎骨正中部に2個の
hot spotを認めた。処置及び経過:生検にてエナメル上皮線
維腫の診断を得たため,平成5年8月24日,全麻下にて下顎骨
部分切除術,32|歯根端切除術,1|1234抜歯術を施行し
た。術後3年を経過するも再発は認めず経過良好である。組
織学的には,腫瘍はエナメル上皮様細胞と線維性結合組織の
増殖よりなる充実部と線維芽細胞様細胞の増殖をともないエ
ナメル上皮様細胞に裏層された嚢胞部よりなっていた。