舌に生じた神経鞘 腫の1例
横林康男,日
出嶋康博,前田美智之,川北小百含
富山県立中央病院歯科・口腔外科(主任:
横林康男部長)
抄録:
神経鞘腫は神経鞘のシュワン細胞に由来する腫瘍で,口腔
領域に生ずることは比較的少ない。今回私たちは,舌に生じ
た本症のl例を経験したので,その概要を報告する。
症例は16歳の男性で齲蝕治療を希望して平成3年11月2日当
科を受診した。家族歴では特記事項はなく,既往歴では4歳
で扁桃腺摘出術を受けていた。現病歴では,小学生の頃より
右舌部の腫瘤に気づくも放置。今回齲蝕治療のため当科を受
診し指摘されたものである。現症では全身的所見,口腔外所
見ともに間題なく,口腔内所見では右舌下面に径25mm程度の
比較的境界明瞭な腫瘤を認め,弾性硬で可動性があり,圧痛
は認めなかった。臨床検査所見では異常はみられなかった。
処置および経過:舌腫瘍の診断にて平成3年12月17日,全
身麻酔下で腫瘍を摘出した。術後4年7ケ月を経過するが,再
発は認めない。病理組織学的所見では,腫瘍細胞の核が特有
な棚状配列を示すAntoni A型の神経鞘腫であった。