自閉症児者の口腔衛生管理
−歯磨き
に関する調査−
田邊義浩,石倉優香*,野田 忠
新潟大学歯学部小児歯科学講座(主任:野田 忠教授)
*新潟大学歯学部附属病院特殊歯科総合治療部(部長:河野正司教授)
抄録:
精神発達遅滞や自閉症の患者の口腔清掃状態は不良な場合が多いといわれてい
る。今回我々は自閉症児者の毎日の歯磨きの状態を把握し,適切な歯磨き指導につ
いて検討するため,自閉症児者の家庭における歯磨きに関するアンケート調査と,
患者本人の歯磨きの様子をビデオテープに記録して観察した。対象は新潟市内の施
設に通所する16歳から27歳の自閉症児者17名とした。
その結果,
1. 保護者に対するァンケート調査より,家庭での歯磨き習慣がある者は9名
(52.9%),独りでも歯磨きできる者は11名(64.7%),家庭では保護者が介助し
て歯磨きしている者が8名(47.1%)であった。
2. 絵カードを用いた患者本人の口腔衛生に関する意識調査の結果,歯磨きは口腔
内を清潔にし,歯と歯周組織の健康維持のために重要であることを理解している者
は17名中3名(17.6%)であった。
3. 患者が自由に歯磨きした場合は,歯磨き時間の部位ごとの偏りが大きく,全く
磨かない部位も存在した。歯科医師が介助して歯磨きすると時間の偏りは有意に改
善し,自由磨きでは磨かなかった部位についても,ある程度磨くことができた。
4. 1−3の結果について多変量解析を行ったところ,歯磨き時間の部位的な偏り
は,年齢が高い者,または歯磨きの意味を理解している患者において,介助した場
合に改善する者が多い傾向が認められた。