口腔内装置により治療した閉塞型睡眠時無呼吸症候群の2例 


米澤 雅裕,河野 正己,中谷 現,中島 民雄 
小林 博※,土田 幸弘※,河野 正司※
   新潟大学歯学部口腔外科学第1講座
     (主任:中島民雄教授)
   ※新潟大学歯学部歯科補綴学第1講座
     (主任:河野正司教授)


抄録:
 口腔内装置で保存的に治療した睡眠時無呼吸症候群の2例について報告した.第1症例は,60歳男性で軟口蓋が長く咽頭気道の狭窄が認められた.睡眠ポリグラフで無呼吸数および低換気数は,それぞれ94回と13回を観察し,無呼吸時,心電図でSTの低下が記録された.睡眠中の最低SpO2は68%で,SpO2が90%未満となった回数は52回,その時間は1470秒であった.心筋梗塞を合併しているため外科治療は断念し,下顎を前方へ7mm,下方へ6mm移動した位置で歯科補綴装置を装着した.これにより,咽頭気道径が拡大する結果となった.最低SpO2は86%になった.SpO2が90%未満となった回数と時間はそれぞれ23回,390秒となった.睡眠中の呼吸障害は明らかに改善した.装置装着による副作用は認められなかった.第2症例は,49歳男性で軟口蓋が長く咽頭気道の狭窄があるための睡眠時無呼吸であった.睡眠中の無呼吸数および低換気数は,それぞれ75回と32回を観察した.最低SpO2は56%でSpO2が90%未満となった回数は92回,その時間は1985秒であった.これらの値は透析直前には軟口蓋が厚くなるために悪化した.下顎位は前方,下方に6mmの位置で装置を装着した.これにより咽頭気道径が1.9mm増加し,SpO2の改善と夜間の呼吸障害が消失した.口腔内装置は,閉塞型睡眠時無呼吸症候群の治療に有効であると思われた.


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